ユング心理学の視点から見た日記。スーパー戦隊シリーズ キョウリュウジャー、トッキュウジャー、東のエデンのレビューと感想。エニアグラム、子どもが育つ魔法の言葉、話が通じない人の心理、自分に気づく心理学。ドラマやアニメから学ぶ人生観。
 
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ミヒャエル・エンデ作

モモ
時間どろぼうと、ぬすまれた時間を人間にとりかえしてくれた女の子のふしぎな物語


そのレビューと感想



第14回「本当の声」


(第7章「友だちの訪問と敵の訪問」より、その5)


どうだね? と紳士は言った。

「こういう人形の遊び方が、これでわかったかね?」


「そりゃ、もうよくわかったけど」

そうこたえるモモは、さむさにからだをふるわせていました。


満足そうに葉巻を吸って、紳士は言った。

このすてきなものをぜんぶもらえたら、きみはうれしいだろうね?

いいよ、みんなきみにあげよう!

でも、ひとつずつ。

お返しは必要ない。

教えたとおりに遊んでくれれば、それだけでいいんだ。

どうだね?


モモの反応は、灰色の紳士が期待していたものとはちがってました。

彼女はなにも言わず、まじめな顔で見返すばかり。


そこで紳士は、言い足しました。

「そうなればきみはもう友だちなんかいらないだろう?」

こんなすてきなものがあって、そのうえもっともらえるとなれば、ひとりで充分にたのしめる。

そうしたいんだろう?

この人形をほしいんだろう?


モモはぼんやりながらも、じぶんがあるたたかいに直面している、いや、すでに巻きこまれているのだと感じました。

けど、それがなんのたたかいなのか? だれにたいするものなのか? そこまではわからなかった。

この人の話を聞いていると、さっき人形と遊んでいたときのようになってくる。

話す声は聞こえるし、ことばは聞こえるけど、話すひとの心はとんと聞こえません。

モモは、かぶりをふりました。


すると、灰色の紳士は、まゆをつりあげた。

「なんだって? どうしたんだ?」

まだ足りないっていうのか?

まだ不足なのか?

教えてくれないか?


足元に目をおとし考えてから、モモは言いました。

「この人形じゃ、好きになれないわ」


灰色の男はながい間、おしだまってしまいました。

そして時間をおいてから、ひややかな声で言った。

「そんなことは問題じゃない」


モモはこの男の目を見て、不安になりました。

とても、ひややかなのです。

でも、それでいて、かわいそうにも思える。

「でも、あたしの友だちなら、あたしは好きよ」

モモは、そう言った。


そのことばを聞いて、灰色の紳士は顔をゆがめました。

けれど、すぐにそれをおさえこんで、笑って言った。

「わたしたちふたりはようく話し合わなくちゃいけないね」

「そうすればきみは、なにが問題なのかがわかるとおもうよ」


「いいかね、モモ――よく聞くんだよ!」

男はそう言いました。


でも、モモは、さっきからようく聞いているのです。

いっしょうけんめいに。

ところがこの男の話を聞くことは、いままでにないほど、むつかしいことでした。

ほかの人の場合は、あいての中にすっと入って、そのひとの考えやほんとうの心を理解することができる。

でも、この紳士あいてでは、それができないのです。

まるで闇の中に落ちていくような感じで、あいてがいないもおなじ。


「人生でだいじなことはひとつしかない」と、男は言いました。

それは、なにかに成功すること。

ひとかどのものになること。

たくさんのものを手に入れること。

ほかの人より成功し、えらくなり、金持ちには そのほかのもの――友情だの、愛だの、名誉(めいよ)だの、そんなものはかってに集まってくる。

「きみはさっき、友だちが好きだと言ったね」

「ひとつそのことを、冷静に考えてみようじゃないか」


モモはあんまりさむいので、はだしの足をスカートにかくし、上衣をできるだけひっぱって、まえであわせました。


「第一の問題はこうだ」と、灰色の紳士はつづけた。

きみがいることで、きみの友だちは、どういう利益(りえき)をえているだろう?

なにかの役に立っているだろうか?

成功すること、金をもうけること、えらくなること、それの助けになっているだろうか?

そんなことはない。

時間を節約する努力を、はげましているか?

むしろ、じゃましているよね。

たぶんきみは、それにいままで、気づかなかったのだろう。

「モモ――いずれにせよ、きみがいるってことだけで、きみは友だちに害悪を流しているんだよ」

「そうだ、そのつもりはなくとも、きみはほんとうにみんなの敵なんだ!」

「それなのにきみはやっぱり、だれかが好きだなんて言うのかね?」


モモは、困りました。

どうこたえていいか、わからない。

そもそも、こんなふうな考え方をしたことが、ない。

一瞬、自信がなくなって、この紳士の言うことが正しいのではないかと思えたほどです。


「だからこそわれわれは、きみの友だちをきみから守ろうとしているんだ」

灰色の男は、そう言いました。

だからもし、友だちのことを思うのなら、協力してほしい。

みんなを成功させてやりたいんだ。

われわれこそ、みんなのほんとうの友だち。

みんなのすべきことを、きみがじゃまするのを、見てられないんだ。

みんなのことは、ほうっておいてもらいたい。

だからこの、すてきなおもちゃをプレゼントするわけだ。


「<われわれ>ってだれのこと?」

モモはふるえるくちびるで、ききました。


男は正直にこたえた。

それは、時間貯蓄銀行のなかまのこと。

自己紹介までします。

わたしはそこの外交員BLW/553/c なんだよ。

わたしは個人的には、ただきみによかれとばかり考えているんだ。

それというのも、時間貯蓄銀行をばかになんぞしたら、ただではすまないからね。


この話を聞いて、モモは、ベッポとジジが話していたことを思い出した。

時間の節約とか、伝染病みたいだとか、そう話していたことを。

そうするとこの灰色の紳士も、それになにか関係しているのかもしれない。

そう思うと、モモはゾッとした。

ジジとベッポがここにいてくれたらいいのにと、思いました。

でも、こわがっちゃいけないと、モモは自分に言いきかせた。

そして、勇気をふりしぼり、灰色の紳士の心がひそんでいるであろう、手ごたえのない闇の中に、入ってゆきました。


その様子を、灰色の男は、横目で観察していた。

彼は皮肉っぽく笑って、言いました。

むだな骨折りはやめたほうがいい。

われわれに立ちむかおうなんて、できるわけないからね。


モモは、あきらめず、聞き返しました。

「それじゃ、あんたのことを好いてくれるひとは、ひとりもいないの?」


灰色の男はがっくりうなだれ、それから、灰色の声で言いました。

きみみたいな人間におめにかかったのは、はじめてだ。

きみみたいな人がたくさんいたら、われわれの時間貯蓄銀行はとっくにつぶれちゃって、われわれじしんも、消えてしまうことになる。


灰色の紳士は、くちをつぐんでモモを見ました。

まるで、手に負えないなにかと、けんめいにたたかっているようでもある。

灰色の顔は、いっそう灰色になりました。


「われわれは正体をかくしておかなくてはならないんだ」と、男は言った。

でも、まるで遠くから聞こえてくるよう。

「われわれがいることも、していることも、だれにも知られてはいけない…」

「われわれはどんな人間の記憶にも残らないように気をつけている…」

「知らないでいるあいだしか、仕事ができない…」

「むつかしい仕事だ、人間から生きる時間を一時間、一分、一秒とむしろ取るんだからな…」

灰色の男は、次から次へと、勝手に話し出しました。

それによれば、人間が節約した時間は、人の手には残らない。

時間貯蓄銀行が、うばってしまう。

人間たちは時間のなんたるかを知らない。

だから知っているわれわれが、とことんまでしゃぶりつくすのだ。


灰色の紳士は、両手でじぶんの口をふさぎました。

目をカッと見ひらき、モモを見ている。


やがて男は、あわてだした。

わたしの言ったことはわすれてくれと、モモにひっしにたのみます。


男は鉛色のかばんをつかむと、車のところに走りました。

するとどうでしょう、さっきまでひろげていた、ビビガールやビビボーイ、そのアクセサリーやなんやが、まるで逆再生するように、トランクに吸い込まれ、ふたが閉まったのです。

あわてるようにして、自動車は走り去りました。


灰色の男と会ったひとびとのように、モモも、ものすごいさむさを感じました。

でも、そこからが、ちょっとちがっていた。

さむさがひいていくとともに、人びとは、灰色の男についてわすれてしまいました。

モモはぎゃくに、さむさがひくとともに、いま聞いた話がはっきりわかってきたのです。

記憶から消えることはなかった。

というのも、モモは灰色の紳士の、ほんとうの声を聞いたから…





モモ―時間どろぼうとぬすまれた時間を人間にかえしてくれた女の子のふしぎな物語 (岩波少年少女の本 37)





<感想>


灰色の紳士は、いつものように説明しました。

その気にさせる説明です。

ところがモモは、ノってこない。

ただ黙って、相手の顔を見るばかり。


ここで、奇妙なことが起こりました。

奇妙でありながら、いつものこと。

モモがみんなの話を聞いてあげている時と、同じことが起こったのです。


モモは何も言わないのに、灰色の紳士が、勝手に話し出した。

中にあるものを、披露しだしました。


はじめは、説明だった。

それが、思い通りにならないので、怒りだします。

そして、さらに説明しだした。

自分たちの価値観は、どんなものか。

それに対し、モモはどうか。

灰色の男は、モモが害悪を流していると言い、みんなの敵だとまで言いました。

そしてやがて、自分が誰なのかまで話しはじめます。


そしてついに、自分たちの目的や、隠されていたことまで、話した。

抵抗しようとしても、勝手に口から出てきたのです。


男は逃げ出しました。

隠さねばならない、本当の声を聞かれてしまった。

そんなことは、はじめてのことでした。

本当のことは言わず、相手をコントロールしていた男なのに、本当のことを話し、聞かれてしまった。


灰色の男は、逃げるしかありませんでした…





完訳 グリム童話集〈1〉 (岩波文庫)



完訳 ペロー童話集 (岩波文庫)





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Author:南方 城太郎
生息地:関西
分類:昭和人間
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黒電話、赤電話が主流で、冷房は扇風機、暖房は石油ストーブと炬燵という時代


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