ユング心理学の視点から見た日記。スーパー戦隊シリーズ キョウリュウジャー、トッキュウジャー、東のエデンのレビューと感想。エニアグラム、子どもが育つ魔法の言葉、話が通じない人の心理、自分に気づく心理学。ドラマやアニメから学ぶ人生観。
 
ミヒャエル・エンデ作

モモ
時間どろぼうと、ぬすまれた時間を人間にとりかえしてくれた女の子のふしぎな物語


そのレビューと感想



第7回「魔法の鏡と、心臓の結び目」


(第5章「おおぜいのための物語と、ひとりだけのための物語」より、その後編)


観光ガイドのジジが話すのは、おおぜいのための物語。

でも、人間としてのジジが好きなのは、ひとりだけのために話す物語。

その相手とは、もちろん、モモです。

ジジは、ほかに誰もいない時、モモにおとぎ話を話すのが好きだった。

それはいつもモモとジジが主人公のお話で、モモひとりに話すものであり、ジジとモモ、ふたりだけのための物語。


時にはモモが、ジジに話してと、ねだることもありました。

この日は、「魔法の鏡」という題がいいと、モモは言った。



むかし、むかし、モモという名の美しいお姫さまがいた。

姫は、高い高い雪山の上の、ガラスの城に住んでいました。

モモ姫は、何でも持っていた。

着るものも、食べるものも、すべてじょうとう。足りないものは、何もない。

でも、お姫さまは、ひとりぼっちでした。

召使い(めしつかい)や侍女(じじょ)、犬や鳥、花でさえ、すべて鏡にうつった影だったのです。


モモ姫は、まじりけのない銀でできた大きなまるい鏡を持っていました。

これを毎日、朝に夕に、そとの世界に送ります。

大きな鏡は空をただよって、世界を旅します。

誰も不思議とは思わない。あれは月だと言うばかりです。


魔法の鏡は旅の間に、自分にうつる影をあつめます。

そしてお城にもどってくると、つかまえた影を、お姫さまに差し出すのでした。

モモ姫はその中から、気に入ったものだけを選びます。

残りは、川にすてちゃう。

すると自由になった影は、すごいはやさで流れていって、たちまちもとの持ち主のもとにもどった。


モモ姫は、永遠(えいえん)の命をもっていました。

魔法の鏡に自分の姿をうつした人は、いつかは死ぬ運命になる。

でも、姫さまは、鏡に自分をうつしたことがありませんでした。

けっして、のぞこうとはしなかった。

彼女はたくさんの影と遊び、何の不満もなく、楽しくすごしていたのです。

永遠の時間の中で。


ところがある日のこと、鏡が、お姫さまの心をうばうような影を持って来ました。

それは、ある若い王子さまの影。

姫さまは、すっかりその影のとりこになってしまった。

でも、どうしたら、会えるのだろう?


考えたすえ、姫さまは、魔法の鏡に自分をうつす決心をしました。

もしかすると、鏡が空をただよっている時に、たまたま王子さまがそれを見上げ、わたしの姿に気づいてくれるかもしれない。そして、鏡を追ってここまでやって来てくれて、わたしを見つけてくれるかもしれない。

お姫さまは長い間、鏡をのぞきこみ、鏡を自分の影といっしょに、下界に送り込みました。

こうして、モモ姫は、永遠の命を失うことになったのです。



王子さまの名前は、ジロラモといった。

彼は自分でこしらえた、1日分だけ未来の国、<あしたの国>をおさめていました。

国民はみんな王子さまを愛し、尊敬(そんけい)していた。


そんなある日、大臣が王子さまに、結婚のさいそくをしました。

そこで、おきさき選びが行われることになって、国中の美しい娘たちがあつめられた。

ところがその中に、ひとりの悪い妖精(ようせい)も、まぎれこんでいたのです。

彼女の体には緑色の冷たい血が流れていましたが、厚化粧でそれを隠していました。


悪い妖精は呪文を使って、ジロラモ王子に、他の誰も目に入らなくした。

こうしてかわいそうな王子は、妖精の美しさにまどわされて、おきさきさまになってほしいと、プロポーズしてしまいました。


結婚するにあたり、妖精はひとつ条件を出した。

それは、1年の間、空にただよう銀の鏡をけっして見てはいけないというもの。

もしも見てしまったら、王子はたちまちすべての記憶をなくしてしまう。

そして自分が誰だかも分からなくなって、誰ひとり知る人のいない<きょうの国>に行き、そこでまずしく名もない、あわれな人として暮らさねばならなくなるのです。

何も知らないジロラモ王子は、その条件をのんでしまいました。


王子さまを待つ、モモ姫。

でも、王子さまは、いっこうにあらわれません。

そこで姫はガラスの城を出て、下界に行って王子さまを探す決心をしました。

彼女は世界中をめぐり、苦難の末(くなんのすえ)、とうとう、<きょうの国>までたどりついた。

靴はすっかりすりきれて、もう、はだしで歩くしかありませんでした。


ある晩のこと、ジロラモ王子は宮殿(きゅうでん)の屋上で、おきさきとなった妖精と、チェスをしていました。

すると、王子の手に、小さなしずくが落ちてきた。

「雨ですわ」と、緑の血の妖精は言った。

でも、空には雲ひとつないはず。

王子は思わず、空を見上げました。

そこにあったのは、銀の大きな魔法の鏡。

その中に、モモ姫がうつっている。そして、泣いている。

さきほどのしずくは、モモ姫の涙だったのです。

そのしゅんかん、王子さまは、妖精のわなにかかったのだと気づきました。

相手が本当は赤い血のかよわない悪い妖精だと知った。

モモ姫こそが、王子さまがほんとうに愛する人だったのです。


しかし、時すでにおそし。

「おまえは約束をやぶったね」と、妖精はすごい形相(ぎょうそう)で言った。

妖精は王子さまの胸に手をのばし、心臓にむすび目をひとつ作りました。

すると王子は、とたんに自分が<あしたの国>の王子だということを忘れ、自分から城を、そして国を、出て行ってしまいました。

彼は世界中をさまよったあと、やっと<きょうの国>にたどりつき、それからというもの、ジジとだけ名のって、まずしく、人に知られぬ役立たずとして、くらしました。

たったひとつ、彼が手にしていたのは、魔法の鏡からとった、モモ姫の影だけ。

その時以来、空をただよう鏡は、ずっとからっぽのままです。


モモ姫は、美しかった服もすりきれ、今では古ぼけた男ものの上衣を着て、つぎはぎだらけのスカートをはいていました。

暮らすのも、お城とはほどとおい、廃墟(はいきょ)です。


その廃墟で、ある美しい日に、ふたりは出会った。

でも、モモ姫は、目の前の相手が<あしたの国>の王子さまだとは知りません。

そしてジジも、この女の子がモモ姫だとは、気づきませんでした。

ただ、ふたりはそれでもなかよしになり、たがいの不幸をなぐさめあった。


ある晩のこと、からっぽになった銀の魔法の鏡が空をただよっていた時、ジジは持っていた鏡すがたを取り出して、モモに見せました。

それはもう、しわくちゃになりよく見えなくなっていましたが、それでもモモは、それがむかし自分が送ったものだと気づいた。

そしてあらためてジジの顔を見つめ、それが自分があれほど探し求めていた王子さま、その人なんだと、気づきました。

モモはこれまでのことを、すっかり、ジジに話した。


しかし、ジジは言いました。

ぼくには、ちっともわからない。ぼくの心臓にはむすび目があるもんで、むかしのことはなにひとつ思い出せないんだ。


それを聞いたモモ姫は、王子の胸に手を入れて、すぐに心臓のむすび目をといてあげました。

すると、ジロラモ王子は、すべてを思いだした。

王子は姫の手をとると、いっしょに出かけました。

あの<あしたの国>に、向かったのです。





お話が終わったあと、しばらくして、モモが聞きました。

そのあとふたりは、結婚したの?


そうだろうねと、ジジは答えた。


それでふたりとも、死んでしまったの?

モモがそう聞くと、ジジは言いました。

いや、ちがう。

魔法の鏡はね、ひとりでのぞきこんだ人間から、永遠の命をうばうだけなんだ。

ふたりしてのぞけば、また死なないようになるんだよ。

あのふたりも、そうやったのさ。



空には、魔法の鏡のような月が浮かんでいます。

ふたりしてそれを見ていると、ふたりは永遠に死なないんじゃないかと、強く思えました…





モモ―時間どろぼうとぬすまれた時間を人間にかえしてくれた女の子のふしぎな物語 (岩波少年少女の本 37)






<感想>


鏡は、おそろしいことに、自分を映し出します。

自分のしていること、自分の態度、そんなものを映し出す。

鏡を見ない限り、人は自由に生きられるかもしれない。

何のおかまいもなしに、それこそまるで永遠の命を持っているかのように、生きられる。


でも人は、何かの拍子に、鏡を見てしまうかもしれない。

誰かに惹かれたり、何かに突き動かされたり、時には不意に、あるいはまるでセッティングされているかのようにして、鏡を見てしまいます。


鏡を見た人は、放浪の旅に出る。

今までには留まれないので、今までから、去らねばならない。

モモ姫はガラスの城を出て、<きょうの国>にたどり着いた。

ジロラモ王子も城や国を出ざるを得なくなり、<きょうの国>にたどり着いた。


王子は<あしたの国>にいる限り、みなに愛され、しあわせに暮らしていました。

鏡を見ることなく未来に生きている限り、しあわせだった。


でも、運命はそれをゆるさず、やがて下界に、<きょうの国>に行かねばならなくなった。

未来に生きている限りしあわせだった王子も、現在の世界では、そうではありませんでした。

そこには、つらい日々が待っていたのです。


が、そこでこそ、待っていた人と出会えた。

<あしたの国>では会えなかった人と、<きょうの国>で、出会えました。

ところが、妖精の呪いで、王子はそれを知ることができない。


その呪い、胸の中の結び目を、モモは解きました。

血管に結び目を作るとえらいことになりそうですが、「心臓 → 心(ハート)」となると、案外我々も、結び目を作っているものかもしれません。

どこかで、心に結び目を作り、何かを忘れたり、何かが見えなくなっているのかもしれない。

心のどこかで、目詰まりを起こす。


モモ姫は、その結び目を、解いてくれました。

すると、目が開け、分かるようになり、ジジは悟った。



怖いけど、見ないわけにはいかない、鏡。

でも、ふたりしてのぞくと、また死なないようになるそうです…





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Author:南方 城太郎
生息地:関西
分類:昭和人間
生まれ:
黒電話、赤電話が主流で、冷房は扇風機、暖房は石油ストーブと炬燵という時代


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